形成外科とは
形成外科は、全身の表面組織に生じた様々な異常、変形、欠損、外見をより良い状態にするための専門診療科です。外科的手法・技術を用いるのですが、その際には体の機能だけでなく、形態的にもより美しくし、QOLの向上を目指します。具体的には、顔の外傷・骨折、やけどや傷あと、あざ、皮膚潰瘍、腫瘍、先天的な外表異常の治療、欠損した組織の再建などを行います。
形成外科で扱う主な疾患
- 皮膚皮下腫瘍(ほくろ・できもの・しこり)
- 眼瞼下垂
- 眼瞼内反
- 切り傷・擦り傷などのケガ
- きずあと・瘢痕
- ケロイド
- 血管腫・あざ
- 陥入爪・巻き爪
- 腋臭症
皮膚皮下腫瘍
(ほくろ・できもの・しこり)
皮膚皮下に見られる腫瘍として、ほくろ(色素性母斑)・粉瘤・脂肪腫などの良性腫瘍と、悪性皮膚腫瘍(基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫など)があります。
色素性母斑は皮膚の一部にメラノサイトという色素細胞が集まったものが代表的であり、見た目を気にされる方も多くいらっしゃいます。粉瘤は感染し炎症が起きると疼痛を伴います。脂肪腫は徐々に増大することが多く、いずれの腫瘍も手術で除去することができます。
また、皮膚腫瘍には悪性との鑑別が大切なものもあります。短期間で急に大きくなったり、色が濃くなったり、色素がまわりの皮膚に染み出してきたり、硬化してきたような場合は、注意が必要です。
眼瞼下垂 (がんけんかすい)
眼瞼下垂は、上のまぶたが下の方に向かって垂れ下がっているため、まぶたが開けづらくなる状態です。生まれつきまぶたを開く力が弱い方がおり、この場合を先天性眼瞼下垂と呼ばれます。一方、生まれた時は正常ですが加齢によってまぶたの皮膚が弛んだり、様々な原因で眼瞼下垂になる場合を後天性眼瞼下垂と言います。コンタクトレンズの長期装用やアレルギーにより上眼瞼を反復的に擦る動作で発症することもあります。
眼瞼下垂の方は、下がったまぶたをおでこの筋肉で持ち上げてものを見ようとするため、常におでこの筋肉が収縮した状態となり、肩こりや頭痛が起こることもあります。眼瞼下垂の手術を受けると眼が開きやすくなり、物が見やすくなって目も疲れにくくなったり、肩こりや頭痛が改善する方も少なからずおられます。また、形成外科で眼瞼下垂の手術を受けると、見た目もきれいな二重にすることが可能です。
眼瞼内反 (逆さまつげ)
逆さまつ毛には、睫毛乱生(しょうもうらんせい)と眼瞼内反(がんけんないはん)の二種類があります。睫毛乱生は睫毛の並び方が不揃いで、睫毛の一部が角膜(黒目)にさわって刺激し、痛みや痒み、異物などの不快感が起こります。眼瞼内反はまぶたの縁が目の内方に曲がり、睫毛が角膜にさわって黒目を刺激しますので、痛みや視力低下を生じさせます。
切り傷・擦り傷などのケガ
切り傷や擦り傷などのケガを負った際には、まず圧迫止血をする必要があります。清潔なガーゼや布で患部を押えます。なお、ティッシュを用いると傷口にティッシュがつくので避けましょう。カッターなどで皮膚の一部を削いでしまったら、その削いだ皮膚を濡れたガーゼに包んでご持参してください。くれぐれも捨てないようにしましょう。
また、救急外来で縫合や処置を受けたときは、できれば翌日以降に形成外科を受診してください。専門的なチェックをし、場合によっては再縫合を行います。特に顔の場合には形成外科への受診をお勧めします。外傷後のキズ跡や手術跡は、治癒した後にも目立ってしまうことがあります。そのような事態に備えるには、特殊な縫合法で傷跡を目立ちにくくできる形成外科が最適です。
きずあと・瘢痕 (はんこん)
けがや手術で負った傷は、線維組織ができて治っていきます。この線維組織が瘢痕です。どんな傷であっても瘢痕は残ってしまいます。瘢痕は目立たなければ差し障り無いのですが、目立つ瘢痕、特にケロイドや肥厚性瘢痕と呼ばれる状態になると問題です。
傷が治癒する過程で傷を埋める組織が過剰に増殖し、しこりのようになったものがケロイドおよび肥厚性瘢痕です。ケロイドと肥厚性瘢痕を区別する明確な基準はありませんが、一般にゆっくり進行を続けて傷の範囲を超えて周囲へと拡大するタイプをケロイド、組織の増殖が一時的で、傷の範囲内に限られるタイプを肥厚性瘢痕と呼びます。
ケロイド
ケロイドは、胸の真ん中辺りや肩、上腕の外側、背中の上部、下腹有毛部などの比較的皮膚の緊張が強い部位に発生しやすい傾向が見られます。手術やけがの跡のほか、ニキビ跡や本人が気づかないような小さな傷からも発生することがあります。表面に光沢のあるやや赤いしこりで、端の部分はなだらかに盛り上がり、周囲の皮膚は赤みを帯びています。当クリニックでは、比較的小さな傷あとまで対応いたします。
陥入爪 (かんにゅうそう)・巻き爪
陥入爪は、爪の端が皮膚に食い込んで生じる炎症です。特に足の親指の爪を短く切りすぎることによって起きやすくなります。皮膚に爪が食い込んでいき、炎症が起こると痛みや肉芽組織からの出血などがみられるようになります。強い疼痛のため歩くことが困難になるケースもあります。
巻き爪は爪の先端が内側に巻いたようになり、爪の下の皮膚を挟み込むような状態になったものです。幅の狭い靴を履く、足趾に十分な荷重がかからないなどの生活習慣も原因となります。爪の巻き込みが強いと疼痛を伴う場合があります。
当院では「巻き爪マイスター」による矯正治療を行っております。
巻き爪の矯正具「巻き爪マイスター」は、コイルばねに内蔵された超弾性合金ワイヤーの弾性力によって、装着している間に巻き爪が徐々に矯正される医療機器です。保険適応外の治療になります。
注意点としては、爪が短いと痛みを生じたり、取り付けができない場合があります。また、装着中は爪に負荷がかからないようにしてください。
爪白癬を合併している場合・爪の厚みが薄い場合・爪に亀裂が入っている場合は、巻き爪マイスターの装着により爪が割れて(欠けて)しまうことがあります。
装着中に強い痛みや炎症、出血がみられた場合にはご相談ください。
腋臭症 (えきしゅうしょう)
腋臭症は皮膚のアポクリン線から分泌される汗が原因ですが、単なる汗臭さとは異なり、つんと鼻につくようなにおいが特徴的です。汗自体はそもそも無臭なのですが、アポクリン腺から出た汗に含まれる脂質やたんぱく質、糖質、アンモニアなどの成分が皮膚表面の常在菌により分解されることで、鼻につく独特のにおいが生じるのです。会社や学校など、多くの人がいる場では、特に気になることも多いので、形成外科で治療を受けられる方も多く見られます。
異所性蒙古斑
新生児のお尻や腰の辺りには、生まれつき青色っぽいあざ(蒙古斑)があることが多いのですが、なかには腕や足に見られることがあります。このように、お尻や腰付近以外の部位にできる蒙古斑のことを「異所性蒙古斑」と呼んでいます。多くの場合、成長するにつれて次第に薄くなり、目立たなくなっていきますので、自然消退を待つことが一般的です。
しかし、一部のケースでは大人になっても残ってしまうことがあるため、比較的に早い段階でレーザー治療を行うこともあります。
太田母斑
太田母斑は、額や目の周囲、頬などに青みがかった点状のあざや、茶色っぽいホクロ状の斑点ができる疾患です。東京帝国大学の医学部教授であった太田正雄博士が1939年に初めて報告したため、日本人の名前が付けられました。思春期以降の女性に見られることが多いと言われていますが、新生児の段階で出現することもあります。
太田母斑が生じても、通常は痛みやかゆみが生じることはありません。しかし、顔などの目立つ領域にできるため、周囲の視線などを気にされる方もいらっしゃいます。太田母斑は自然消退することがないため、レーザー治療の適応となります。
外傷性色素沈着
外傷性色素沈着は、外傷の際に混入した異物が原因となり、色素沈着を引き起こしてしまう状態です。道路や公園などで転倒すると、傷口から砂やゴミなどが入り込むことがあります。この異物をしっかりと取り除いてから止血処置や縫合を行えばよいのですが、異物が残った状態で傷口が閉じてしまうことで、色素沈着をきたしてしまうのです。外傷性刺青とも言われます。
レーザー治療の適応となります。なお、色素沈着の度合いや面積等によっては、複数回のレーザー治療が必要となるケースもあります。
血管腫 (赤あざ)
血管腫は、血液中に含まれる赤血球によって皮膚表面が赤く見えるあざのことであり、単純性血管腫とイチゴ状血管腫が代表的です。単純性血管腫は、生まれた時点から見られる平らな赤あざであり、顔を中心にいろいろな部分に生じます。赤ワインのような色をしており、原則として悪性化することはありませんが、気になる場合は皮膚科で治療を行います。
イチゴ状血管腫は鮮やかな赤い色をしており、次第に盛り上がってきて表面がイチゴのようなブツブツ模様になります。多くは生後1週間~1ヶ月頃に現れ、7歳頃になると自然に消退していきます。但し、イチゴ状血管腫が増大して大きくなった場合には、様々な機能障害や潰瘍形成などの合併症を招くことがあります。
当院では保険での血管腫のレーザー治療は導入しておりませんが、保険での切除手術や、自費診療での対応は可能です。気になる赤あざがございましたらまずは一度ご相談ください。